ブックトーク・オン・アジア第55回を配信しました

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<ブックトーク・オン・アジア第55回>
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京都大学東南アジア地域研究研究所では、アジアに関する最新書籍を紹介する音声プログラム「ブックトーク・オン・アジア」をSoundCloudYouTubeにて配信しています。

第55回のゲストは、南田みどり先生(大阪大学・名誉教授)です。『ビルマ文学の風景――軍事政権下をゆく』(本の泉社、2021年)についてお話を伺っています。

聞き手は、本研究所の中西嘉宏(政治経済共生研究部門・准教授)です。

 

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『ビルマ文学の風景――軍事政権下をゆく』
南田みどり(著)
発行日:2021年3月
発行元:本の泉社
概要:著者によれば、「ビルマ」と「ミャンマー」はともにビルマ語に起源を持ち、ビルマ族(バマー族=ミャンマー族)をさす同義語だという。実際、1948年の独立時、国名の英語表記としてB urma(発音は「バーマ」)が用いられ、ビルマ語では「バマー」と「ミャンマー」が併用されていた。だが1989年、権力を掌握した国軍は国名を「ミャンマー」に統一することを宣言、いまにいたる。ただ、この統一宣言はあまりにも強引で、越権の要素を孕むだけでなく、矛盾を生じさせていると著者はいう。「本書では、このような根拠に乏しい呼称の使用を避け、従来どおりビルマ語による記述文学をビルマ文学と称する」(本書第一章)。本書は、長くビルマ文学の研究に携わった著者がビルマ(ミャンマー)の戦後文学史を総括する初めての試みである。抗日時代からはじまって、ロヒンギャ問題がクローズアップされた2020年代に及ぶ。著者のビルマの作家たちを見つめる目はあくまで温かく、さまざまに交流を重ねる場面は感動的である。そのときどきのビルマの状況を体感する著者だからこそ、初めて可能な生きた現代史であるといえよう。
本書追記にもあるように、2021年2月1日、ふたたび国軍によるクーデターが勃発した。この追記では、フェイスブックに投稿された抗議デモ参加者の一文が紹介されている。「恐ろしくないかって? 恐ろしいです。人間ですもの。でも私たちの未来を築く子供たちの教育や生活水準や権利が劣化するほうが怖い。だから参加します」。こうした民衆の声を受けて、著者はこう結ぶ、「このような時期に本書が出版されるのは運命というほかない。本書を市民的不服従へのオマージュとしたい。クーデターなんかに負けられない!」。(本の泉社ウェブサイトより)

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配信日:毎月第2・4水曜日(予定は変更される場合があります)
聞き手:中西嘉宏(京都大学東南アジア地域研究研究所・准教授)
制 作:京都大学 東南アジア地域研究研究所 編集室
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