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Packaged Food, Packaged Life : Corporate Food in Metro Manila Slums
Heriberto Ruiz Tafoya(著)
Heriberto Ruiz Tafoya先生の著書 “Packaged Food, Packaged Life : Corporate Food in Metro Manila Slums”(2023年)が出版されましたので、お知らせいたします。
本シリーズは、フィリピンに関する学際的、複合的な観点からの研究を促進し、その成果を刊行することを目的に2019年に創刊されました。京都大学学術出版会とフィリピンのAteneo de Manila University Pressとの共同で出版しています。本シリーズの編集者は、日本およびフィリピンに拠点を置く研究者で構成されており、執筆者にはフィリピンの事例研究を通しどのように東南アジア地域研究をより幅広く、充実したものとすることができるか、明確に論じることが求められます。
貧しさ故の選択が促した「パッケージ食品」の氾濫
その歴史的な問題点と、未来に活かす可能性を問う
マニラ首都圏のスラム街では、小袋や瓶、缶などにパッケージされた何十種類もの企業ブランド食品が売られている。これまでの開発経済学は、所得の増加や個人のライフスタイルの多様化が、そうした「企業ブランド食品」の消費を促したと説明する。しかし事実はそうではない。劣悪な都市環境によってしばしば食品が汚染される現実への対処策として、スラムの人びとは「パッケージされた食品」を選んできたのだ。つまり、制約された生活条件の中で人々が生き抜くための限られた機会として、そうした「企業による食品供給」が促進されたと本書は主張する。
人びとにとって、企業への依存は必要ではない。しかし、国家機関や市民組織がパッケージ食品を生産しそれを人びとが使うならば、それは危険な都市化/近代化の道から抜け出すため道ともなり得る。メキシコの都市貧困層出身の実体験の上に立ち、ラテンアメリカの倫理的・政治的アプローチであるBuen Vivir(よく生きる、充実した人生)とフィリピン先住民のGinhawa(幸福を活気づける生命力)概念に着想を得て、「パッケージ食品」の過去、現在、未来を論じた画期的研究。
刊行日:2023年5月
出版社:Kyoto University Press & Ateneo de Manila University Press