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16. Marriage Migration in Asia: Emerging Minorities at the Frontiers of Nation-States.
Sari K. Ishii, ed. February, 2016.
内容
グローバリゼーションが進んだ現在、結婚移民は、世界の“貧しい地域”から“豊かな地域”への女性移民の流れというイメージだけでは捉えきれない。“豊かな国”・“貧しい国”のどちらに生まれたかに関わらず、男性も女性もともに結婚に関連して移民となり、“豊かな国”も“貧しい国”も、今日では結婚移民の送出国であると同時に受入国なのである。
いったん結婚に関連して移民となった人は、その後、多文化家族のライフ・ステージの変化に伴って多様で複雑な移住パターンを描き出す可能性も高い。本書に収録されている各章の例からは、結婚移民が国境を越えた移動を繰り返せば繰り返すほど、どの国でも法的・言語的・社会経済的に弱い立場に追いやられていく様子が描き出される。これは、結婚移民が男/女どちらであろうと、大人/子どもどちらだろうと、関係はない。また移住が豊かな国から貧しい国への移民か、貧しい国から豊かな国への移民か、もしくは似たような国どうしのあいだで移民したかによっても、変わらない。
国境を越えた移住が繰り返されるほど、結婚移民とその子どもたちは国境を越えたマルチ・アイデンティティを身につけ、同時に市民としての実質的な権利はどの国でも周縁的なものになっていく。この本では、そうした結婚移民をグローバル時代の新たなマイノリティとして位置づける試みのひとつとして生まれた。