教科書で一通り学んだり、現地を経験したりして、もっと深く東南アジアのことを知りたいと思った学生さんに向けて作ったのが、このブックガイドである。初歩的な知識や体験からもう一つジャンプして、学問として東南アジアを学ぶための小さな跳躍台のようなものである。
各解題が対象とするのは、東南アジア研究では古典になっている本の中でも、日本語で書かれたものと、日本語訳があるものである。最新の研究成果ではないが、長い年月の風雪に耐え、現代になっても読む価値を認められている古典的な仕事である。のちの研究によって乗り越えられたものもあるが、研究史の中で知っていなければならない本ばかりで、読んで損をする作品は一つもない。
で、とりあえずの15冊。自然、歴史、政治、社会、経済といった視点から東南アジアをみられるように、各分野の古典を選んだ。すべての分野に精通することは無理だとしても、一通り知っておくと自分の専門とする分野の見方が変わるような本ばかりである。東南アジアで調査をしたり、東南アジアの事例を扱って論文を書こうとしている人にも役立つリストになっている。つまみ食いでも、全部食いでも、好きなようにこのガイドを利用してほしい。(まえがきより)
2022年3月15日発行
編者:中西嘉宏・片岡 樹
企画・発行:京都大学東南アジア地域研究研究所
編集協力・組版:桃夭舎
[ 目次 ]
自然・生態
- 中尾佐助, 1966『栽培植物と農耕の起源』岩波書店(岩波新書):小坂康之
- アルフレッド・R・ウォーレス, 1993『マレー諸島――オランウータンと極楽鳥の土地(上・下)』筑摩書房(ちくま学芸文庫):古澤拓郎
- 鶴見良行, 1982『バナナと日本人――フィリピン農園と食卓のあいだ』岩波書店(岩波新書):柳澤雅之
歴 史
- トンチャイ・ウィニッチャクン, 2003『地図がつくったタイ――国民国家誕生の歴史』明石書店:小泉順子
- レイナルド・C・イレート, 2005『キリスト受難詩と革命――1840〜1910年のフィリピン民衆運動』法政大学出版局:芹澤隆道
- 弘末雅士, 2004『東南アジアの港市世界――地域社会の形成と世界秩序』岩波書店:山口元樹
政 治
- クリフォード・ギアツ, 1990『ヌガラ――19世紀バリの劇場国家』みすず書房:西島 薫
- ベネディクト・アンダーソン, 2005『比較の亡霊――ナショナリズム・東南アジア・世界』作品社:岡本正明
- 土屋健治, 1991『カルティニの風景』めこん:左右田直規
社 会
- ジェームズ・C・スコット, 1999『モーラル・エコノミー――東南アジアの農民叛乱と生存維持』勁草書房:下條尚志
- E・R・リーチ, 1995『高地ビルマの政治体系』弘文堂:片岡 樹
- 石井米雄, 1991『タイ仏教入門』めこん:小林 知
経 済
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