災害対応の地域研究 (叢書サブシリーズ)

「災害対応の地域研究」プロジェクトは、地域研究、防災、人道支援、情報学などの分野の異なる専門家が共同で研究を行うことにより、「メディアと情報」「支援と復興」「社会の再編」「記憶と忘却」の4つの分野で災害対応に取り組む研究プロジェクトです。

研究対象地域を時間と空間の広がりの中に置いて立体的に捉える地域研究の方法を取り入れることで、被災後だけ、そして被災地だけを見るのとは違う防災や人道支援のあり方を提示します。また、社会が潜在的に抱える課題がはっきりと現れる契機である災害への対応過程の検討により、地域社会に対する理解がいっそう深まります。

インドネシアのスマトラ島では、2004年12月にスマトラ沖地震津波(インド洋津波)が発生し、約16万5000人(インド洋沿岸諸国で約22万人)の死者・行方不明者が出る大きな被害を受けました。また、スマトラ(インドネシア)ではその後も毎年のように地震や津波などの災害が起こっています。この研究プロジェクトでは、地域社会の目を通じてスマトラの災害対応を捉えることにより、スマトラの地域社会が災害にどのように対応してきたかを検討し、それをもとに他の地域にも通用する「防災スマトラ・モデル」の構築を試みます。

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、地震と津波の被害が広域に及んでいる点でスマトラ沖地震津波と共通する点が多くあります。東日本大震災の復興過程をスマトラの経験に照らして検討することにより、スマトラの災害対応への理解を深めるとともに、スマトラの経験を踏まえて日本の復興過程に対して必要な提案を行っていきます。

このプロジェクトは、科学研究費補助金・基盤(A)「災害対応の地域研究の創出──「防災スマトラ・モデル」の構築とその実践的活用」(代表:山本博之)を中心に、京都大学地域研究統合情報センターの「災害対応の地域研究」プロジェクトおよび関連する他の研究プロジェクトとの連携により進められています。

第5巻 清水展・木村周平編著『新しい人間、新しい社会―復興の物語を再創造する』(京都大学学術出版会、2015年)

  • はじめに―災害から新しい人間と社会の想像=創造へ(清水展・木村周平)
  • 第一部 紡ぎ出す、読み替える
    先住民アエタの誕生と脱米軍基地の実現―大噴火が生んだ新しい人間、新しい社会(清水展)
    現場で組み上げられる再生のガバナンス―既定復興を乗り越える実践例から(大矢根淳)
    復興の物語を読み替える―スマトラの「標準の復興」に学ぶ(山本博之)
    コラム 居住の権利―住むことは生きること(たけしまさよ)
  • 第二部 忘れる、伝える
    神戸という記憶の〈場〉―公的、集合的、個的記憶の相克とすみわけ(寺田匡宏)
    プーケットにおける原形復旧の10年―津波を忘却した楽園観光地(市野澤潤平)
    コラム コミュニティ防災の決め手(鍵屋一)
    制度の充実と被災者の主体化―生活再建をめぐるせめぎあいの20年(重川希志依)
    トルコ・コジャエリ地震の経験の継承―私の声が聞こえる人はいるか?(木村周平)
  • 第三部 作り出す、立ち上がる
    小さな浜のレジリエンス―東日本大震災・牡鹿半島小渕浜の経験から(大矢根淳)
    アートによる創造的復興の企て―保険に支えられた移動/再建(大谷順子)
    復興ツーリズム―震災後の新しい観光スタイル(山下晋司)
    コラム 被災者と外部者の間から見たボランティアツーリズム(内尾太一)
  • おわりに―被災とともに(木村周平・清水展)
  • 「災害対応の地域研究」シリーズの結びにかえて

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第4巻 川喜田敦子・西芳実編著『歴史としてのレジリエンス―戦争・独立・災害』(京都大学学術出版会、2016年)

  • はじめに—「歴史としてのレジリエンス」を考える(川喜田敦子)
  • 第一部 革命後を生きる—コミュニティから亀裂を修復する
    ベトナム北部農村の現代史—村から見た1945年飢饉・抗仏戦争・抗米戦争(古田元夫)
    インドネシア9・30事件—犠牲者50年の痛み(倉沢愛子)
    中国華北村落のレジリエンス—雨乞い復活を通して考える(石井弓)
  • 第二部 不条理を生きる—共通の敵を作らずに連帯する
    諸帝国の周縁を生き抜く—台湾史における辺境ダイナミズムと地域主体性(若林正丈)
    ナクバ〈以後〉を生きる—難民とパレスチナ問題(長沢栄治)
    脆弱な土地に生きる—バングラデシュのサイクロン防災と命のボーダー(日下部尚徳)
  • 第三部 科学技術と生きる—社会の災いとして認定する
    「ヒロシマ」における回復の諸相—複数の当事者性をめぐって(川口悠子)
    チェルノブイリ原発事故と記憶—ベラルーシを中心に(越野剛)
    赤泥流出と原発事故—東欧スラブ地域からレジリエンスを考える(家田修/セルヒー・チョーリー)
  • おわりに—社会のレジリエンスを歴史に問う(西芳実)

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第3巻 牧紀男・山本博之編著 『国際協力と防災―つくる・よりそう・きたえる』 (京都大学学術出版会、2015年)

  • はじめに―アジアと災害・防災(牧紀男)
  • 第一部 地域の抵抗力をつくる
    水害は不平等に社会を襲う―2011年タイ大洪水(星川圭介)
    自然災害のリスクとともに生きる―2013年フィリピン台風災害とサマール島(細田尚美)
    コラム サマール島のセイフティネット、「ブオタン」な人の連鎖(細田尚美)
  • 第二部 回復力によりそう
    紛争とその後の復興が教えること―1970~93年カンボジア紛争(小林知)
    「小さな物語」をつなぐ方法―1975~99年東ティモール紛争(亀山恵理子)
    コラム 災害の記憶―津波遺構に託される生存者の思い(西芳実)
  • 第三部 支援力をきたえる
    研究所の成長と共に歩む―インドネシアとの防災協力(小林英之)
    災害でも止まらない社会へ―コミュニティ・企業・アジア(小野高宏)
    コラム 大規模災害時の遺体の管理―救援者が知っておきたい知識(髙田洋介)
  • おわりに―アジアの防災モデル確立に向けて(山本博之)

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第2巻 西芳実著 『災害復興で内戦を乗り越える―スマトラ島沖地震・津波とアチェ紛争』 (京都大学学術出版会、2014年)

  • 第一部 紛争下の被災―津波が解く「囲い込み」
    情報空白地域を襲う津波
    統制を破る支援の波
    支援で生まれる秩序
  • 第二部 復興再建期―世界と再び繋がるアチェ
    被災地にあふれる笑顔
    さまざまな弔い方
    住宅再建とコミュニティ
  • 第三部 社会の復興―災害で生まれる新しい社会
    亀裂の修復と社会の再生
    津波の経験を伝える
    津波のうねり
  • コラム
    アチェの女性たち/旗とカーレース/アンワルおじさん/会議と観光は続く

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第1巻 山本博之著 『復興の文化空間学―ビッグデータと人道支援の時代』 (京都大学学術出版会、2014年)

  • 第一部 情報と地域文化
    災害情報を地図化する―スマトラ島沖地震・津波(2004年)
    災害への関心を重ねる―スマトラ島沖地震・津波(2004年)・ニアス地震(2005年)
    誰が「地元」を語る?―ジャワ地震(2006年)
    「正しさ」が招く混乱―西ジャワ地震(2009年)
  • 第二部 支援と格差、そして物語
    米を捨てる人―ベンクル地震(2007年)
    尾根筋に住む―西スマトラ地震(2009年)
    浪費と駆け引き―スマトラ島沖地震・津波(2004年)
  • 第三部 流動性と想像力
    人道支援とビッグデータ―物語や意味を掬い取る
    そして日本―東日本大震災(2011年)
  • 補論 災害・復興研究の系譜―地域研究の視点から

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